NC1000sについて (1)

類稀な機構を実現しながらも,短命に終わった35mmAE一眼レフについて,れんずまにあ様のレポートです。まず,NC1000sとは,どういうカメラなのか,みていきましょう。

概要

この機種に至るまで,すでに5回もマウント変更をおこない,直前まで位置規制ピンつきプラクチカスクリューマウントを採用していたマミヤが,大型バヨネットマウントを採用し,大幅に小型軽量化と電子化を達成して他社のレベルに追いつこうとした,マミヤ初の電子シャッターモデル。しかし,すでに前年にはマルチモードAEの嚆矢ミノルタXDが,さらにNC1000s発売年の4月にはキヤノンA−1が発売されており,これらを筆頭にさまざまな自動化が花開いていた。NC1000sは,当時としても数年遅れたスペックであり,将来性を見限られたのか,発展しないままわずか2年でZEシリーズに切り替わってしまった。基本的にプラクチカスクリューマウントと同じピン押し込み自動絞り機構を保持しつつ,シャッター速度優先自動露光のための絞り制御を達成した,世界でも稀な技術成果をもつ機種であるが,その成果はほとんど省みられることはなかった。

デザイン

デザインおよび操作系配置は,オリンパスOMシリーズや,ニコマートFTシリーズに酷似している。また,横走りフォーカルプレーンシャッターを採用し,上下サイズが詰められていてペンタプリズムが低いことや,セルフタイマー形状はOMに,「Mamiya」ロゴ周辺はニコンFEに似ているとも言える。ただし,OMシリーズでは,軍艦部の多くのカメラでは通常シャッター速度ダイヤルがある位置に,露出補正およびフィルム感度設定ダイヤルがあるが,NC1000sでは綺麗さっぱり消えていて,軍艦部がシンプルで美しい。次のモデル,縦走りメタルフォーカルプレーンシャッターを採用したZEシリーズよりも全体的に小型で,特に全高が低く,スタイルは大変良い。ただ横走りシャッターを採用しているにもかかわらず,小刻み巻き上げはできず,シャッター音やショックはOMシリーズよりかなり大きく感じられる。


操作感について

全体的に,操作系はコンベンショナルなもので,とまどうことは何もない。小型軽量でシャッターの感触も良く,巻き上げレバー,レンズヘリコイドなどの可動部分はスムーズであり,高級機ではないが,後のZEシリーズと違って伝統的な良い操作感触を持っている。


シャッター速度リングとフィルム感度設定

シャッター速度リングがマウント基部にあるのは,オリンパスOMシリーズやレンズシャッターカメラで見られるが,フランジバックがオリンパスOMシリーズよりも短いために,シャッター速度リングの幅が大変狭くならざるを得ない。また,マミヤセコールCSレンズは絞りリングが基部にあるため,この部分を見ずに操作することは容易ではない。このことは,レンズ先端に絞りリングを配置したオリンパスOMシリーズのような,操作系の一貫性に欠けていると言える。さらに,シャッター速度指標は,斜め上前方から覗き込まなければ確認できず,プリズムなどを利用してファインダー内にシャッター速度の情報を表示するしくみはまったくない。機械制御式シャッターを完全に省略した,電子制御機構を採用しているにもかかわらず,何故このような位置にシャッターリングを持ってきたのか,理解に苦しむ。シャッター速度リングと同軸に,フィルム感度設定のためのクロームの丸鋸状円盤があり,設定変更はロック付きでやりづらい。NC1000sには露出補正機構がない。どうしても必要な場合には,フィルム感度を変えて対応するしかないが,これが簡便迅速にはできない。オリジナリティを追求した結果,操作性が著しく犠牲になっていると言える。

電池を入れずにシャッターを切ると,シャッター速度ダイアルが1000〜1のどの位置であっても,1/1000秒で走行する。また,Bは電池に関わりなく動作する。


ファインダー・露出計

この個体は,ミラーの固定に問題があり,シャッターレリーズ後でファインダー上の焦点が狂うが,レリーズ前の焦点は正しかった。ファインダー内表示は,左下にある絞り値の表示とアナログ式露出計だけのシンプルなものである。露出計はCdSを使用しており,反応性はよい。露出計スイッチは,巻き上げレバーを予備角に引き上げることでオンになり,オフにするには巻き上げレバー軸上のボタンを押し込んで,巻き上げレバーを格納位置に戻すようにする。戻し忘れると,バッテリーがあがると思われる。バッテリーチェックボタンは軍艦部後面左手側にあり,軍艦部上面のオレンジ色の窓が光る。電源は,SR44酸化銀電池2個を底部に収納する。バッテリー室の蓋は外れやすく,紛失の恐れがある。(まさひろ さん情報感謝)


セコールCSレンズ

NC1000sのマウント開口部は,大変大きく頼もしい。しかし,それにふさわしい大口径レンズは,ついに姿を現すことはなかった。絞りリングをオレンジ色のポッチを押しながら真上にくるよう回すとロックされ,シャッター速度優先AEモードになる。プラクチカM42マウントの発展形で,シャッター速度優先AEを実現したものは珍しい。露出計はシャッター速度リングとは連動しているが,レンズ側からボディへ,絞りの情報はまったく伝達されないので,TTLマニュアル露光は,シャッター速度を先に決めてファインダー内指針で指示された絞り値を絞りリングに移し替えるか,セットした絞り値を記憶しておいてシャッターリングを回し,指針を希望の絞り表示に動かすことになる。


CSレンズをZEシリーズボディで使う

NC1000sのマウント爪は,ZEシリーズと同じ形状なので,セコールCSレンズをZEシリーズボディに装着することは可能である。ただし,自動絞り機構がまったく異なるため,互いに摺動部分をずらせて装着される。すなわち,ZEボディ正面からみて9時半の位置にCSレンズの上面指標がくる位置でロックされる。このとき,絞り込み実絞りAEで撮影可能である。セコールCSレンズは,フランジから後方への突出度合いが小さく,リアキャップの底が浅い。自動絞りレバーが長く突出しているセコールE/EFレンズには,CSレンズリアキャップは装着できない(逆は可能)。したがって,NC1000sボディにセコールE/EFレンズを装着することは,内部機構を破損する恐れがあるし,また,セコールE/EFレンズの絞りはボディ側で制御されるので,レンズ単体では常に最小絞りになる。装着できたとしても実用的ではない。

by れんずまにあ


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