Mamiya-6 type K

●カメラについて

 1954年8月に発売された,6×6判と6×4.5判兼用のスプリングカメラである。蛇腹をもった折畳式のカメラのうち,畳まれた状態でボタンを押すとばねの力で自動的に撮影体勢になるようなしくみをもったものを,とくにスプリングカメラとよんでいる。マミヤシックスは,1940年のI型以来,長期間にわたって発売されたスプリングカメラのシリーズである。
 マミヤシックスの特徴は,ピント合わせ機構にある。
 通常のカメラでは,レンズ(全体あるいはその一部分)がフィルム面に対して前後することでピントを合わせるようなしくみになっている。それに対して,マミヤシックスでは,レンズは動かず,フィルム面が前後することでピントを合わせるようになっている。これは,バックフォーカス機構とよばれる。このようなしくみをもったカメラの例は少ないが,たとえば後に京セラから発売された「CONTAX AX」(1996年)などがある。「CONTAX AX」は,TTL式のオートフォーカス機構をもつ35mm判一眼レフカメラであったが,マミヤシックスは二重像合致式の距離計に連動したファインダーをもち,構えたときに右手の親指がくる位置にあるノブを回転させてピントをあわせるようになっている。スプリングカメラでは,レンズの移動と距離計を連動させるのは容易ではないが,マミヤシックスはバックフォーカス機構によって,距離計連動の精度を高めることに成功している。

●マミヤシックスのバリエーション

 1940年から1958年にかけて発売されたマミヤシックスシリーズは,全部で14機種を数えられる。「マミヤシックスK」は,6×6判と6×4.5判兼用の「マミヤシックスV」(1953年)の廉価版という位置づけになる。
 「マミヤシックスV」と「マミヤシックスK」の相違点としては,以下のようなものがある。

Mamiya-6 VとMamiya-6 Kの相違点
特徴 Mamiya-6 V Mamiya-6 K
フィルム送り 自動巻き止め 赤窓式
レンズ Dズイコー (テッサー型) セコールT (3枚玉)

 「マミヤシックスK」の後に,改良型の「マミヤシックスKII」が1956年に発売されている。マミヤデジタルイメージング株式会社のウェブサイトにある資料(*1,*2)によれば,改良された点としては次のようなものがある。

Mamiya-6 KとMamiya-6 K2の相違点
特徴 Mamiya-6 K Mamiya-6 K2
フォーマット切り替え(フィルム面) 中枠を画面にはめこむ 両扉開閉式
フォーマット切り替え(ファインダー) 両端の青く着色された部分でセミ判と識別 金属板をスライドして切り替え(マミヤシックスVと同じ)
フィルム圧板 はめこみ式 蝶番式
レンズ Dズイコー (テッサー型) セコールT (3枚玉)

 輸出仕様と国内仕様の差異や,部分的な改良,また,かつてメーカーに問い合わせたときのお話によれば,部品の調達の都合などから,この当時のカメラには細かいバリエーションの差が見られるという。たとえば,距離スケールの表示(フィートかメートルか),シンクロ接点(X接点かM接点か),セルフタイマーの有無,レンズなどに違いが生じることがあるらしい。

●撮影について

 ボディはダイカストで製造されており,非常に堅牢である。カメラはそれなりに重いものの,折りたたむと35mm判一眼レフカメラよりも明らかにコンパクトになり,携行性に優れている。内蔵距離計の基線長は短いが,二重像の分離はよく,使いやすい。軍艦部には距離スケールが表示され被写界深度の目盛りもある。右手はピント調整とシャッターレリーズに集中でき,たいへん操作がしやすくなっている。
 フィルムを装填するときには,まずフォーマットを確認する。フィルムをセットしてら,圧板をはめこみ,裏蓋を閉める。選択したフォーマットに合わせた赤窓が開くようにしてから,赤窓を見ながらフィルムを送れば,撮影準備の完了である。


Mamiya-6 K, SEKOR T 7.5cm F3.5, E100VS

 オプションの「オートアップ」を使用すると,0.5mくらいまでの近接撮影が可能になる。


Mamiya-6 K, SEKOR T 7.5cm F3.5, E100VS

(by MATIA)

*1 http://www.mamiya.co.jp/home/camera/museum/saishu-page/1950/mamiya6-k.htm

*2 http://www.mamiya.co.jp/home/camera/museum/saishu-page/1950/mamiya6-k2.htm


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